第3章 オンボロ寮
宿として貸し出された建物で寝泊まりする間、元の世界への帰り方を探す――。
学園長先生の立ててくれたプランを聞いた途端、私は見開いた目に星屑を浮かべる心地を覚えた。
なんて一分の隙もないアイデア。
快刀乱麻を断つ素敵な案に胸の高鳴りが抑えられなかった。
雨風がしのげる場所を無償で提供してくれるなんて……っ。
掃除が必要とのことだけれど、与えられた居場所がどんなところでも、今の私には天の恵みに等しいので些事である。
ああ、なんて素敵。
鬼ばかりに思えた世間にも船が渡ってくるように、私にとっての希望の光は目の前の学園長先生その人を象っていた。
「あ~なんて優しいんでしょう、私!教育者の鑑ですね」
「はいっ!とっても優しいです、学園長先生。ありがとうございます!さすが教育者の鑑っ、人格者!」
「そうでしょう、そうでしょう!もっと褒めてくれていいんですよ。――――では善は急げです。寮へ向かいましょう。少し古いですが、趣のある建物ですよ」
「楽しみだわー」
知らない場所に理不尽に放り出されて、孤立無援の一途をたどるより遥かに救いがある展開だった。
右も左も分からない世界で孤独と不安に駆られっぱなしだったから、学園長先生の無類の優しさが特別身に沁みる。
未確定なことも多く、元の世界に帰る手立てもない今は、一時凌ぎでしかない妥協だとしても甘んじる他ない。
帰れる保証なんてどこにもないし、不安は何一つ消えていなくても――それでも路頭に迷わずにすむのだと思えば、それだけで十分有難いことなのだから。
暗雲が立ち込め始める空の下、閉ざされゆく月明かりよりも目の前を歩く背中が、今の私の道しるべだった。