第3章 オンボロ寮
今度は、本棚に目を向けてみる。
上の方の本は踏み台がないと届かないから、目線の高さにあった本を棚から抜き取って中を確かめてみた。
が、やっぱり何も情報は得られない。
文字が読めないのだから仕方がないのだけれど。
時々見たことない複雑な模様の図形が描かれているけれど、これは何かしらー?
魔法陣?
なら、この本は……ええと、なんていうんだっけ?
……ああ、そう、"魔導書"っていうものだったりして。
RPGのゲームに出てくるアイテムの名前を思い出し、全く関係のないことに得心いったところで本を戻す。
今度は反対側の書架を適当に漁っては、すぐに戻しを繰り返す。
当然といえば当然ながら手応えはてんでない。
これだけたくさん本があるのだから一冊くらい日本語で書かれた本があってもよかったのにねぇ。
小さく溜息を吐きながら、ふと視線を巡らせると燭台の下に天球儀を見つけた。
黄ばんだ羊皮紙のような色合いをした球体。
描かれている地図の中から日本列島を探してみるけれど、それらしき形の島は見当たらない。
指先で球体を軽く回すと、名前も知らない大陸や海がクルクルと目の前を流れていく。
こんなことをしたって意味はないのに……故郷を探そうとする指先だけが、諦めきれずに球体をなぞる。
片頬に手を当て、ゆっくりと回転を失っていく天球儀をぼんやりと眺めていれば、コツコツという靴音が聞こえてきた。
二階の書架を調べていた学園長先生が、階段を降りてこちらへ歩いてくる。
徐に両腕を組んだ彼は、独り言ちるみたいに神妙な声色で「やはり、ない」と口にした。
「世界地図どころか、有史以来どこにも貴方の出身地の名前は見当たりません」
「私も調べようとしましたけど、そもそも文字が読めなくって……」
自分のことなのにどうしようもできなくて申し訳なく思っていると、文字さえ読めないと言った私に学園長先生の金色に光る目がぐにりと横に伸びた。
目を細めたようにも見える動きだ。