第3章 オンボロ寮
この学園の図書室は、本校舎の外に建設されているらしく、崖の下のすぐ側に構えられていた。
見覚えのある道のりと建物だと思ったけれど、それもそのはず。
先刻、グリムちゃんに追われて逃げ込んだ部屋が、まさにこの学園の図書室だったのだから。
ランプに火が燈ったことで、図書室の中が明るく照らされる。
あの時は真っ暗だったし、中を見回す余裕なんてなかったけれど……改めて見てみると、まさしく"魔法学校の図書室"というイメージにピッタリの内装だった。
乾いた木材の香り。
空気に滲む、古びたインクと紙の匂いに満ちた空間。
森の大樹みたいに高く、高く伸びる本棚は、天井へ届かんばかりの高さを誇っている。
二階部分の奥の奥まで続く、幾重にも連なった書架。
その棚という棚には、隙間なく本が並べられていた。
そして、この図書室を最も魔法学校らしく印象付けるのは、あちこちの空中を漂う本だった。
きっとこれも魔法の力によるものなのだろう。
風景や不思議な模様が描かれた、色鮮やかな表紙の本。
分厚くて、革張りの装丁の本。
背表紙の文字さえ消えかかった、一目で年代物とわかる古書もある。
試しに手近に浮いている本を一冊手に取ってみると、意外とすんなり手元に収まってくれた。
魔力がないと反発されるかも、と思ったけれど杞憂だったみたい。
パラパラとページをめくってみるも、残念ながら内容を読み解くことは出来なかった。
どころか、一文字たりともわからない。
やっぱりというべきか、扱われている文字にまるで馴染みがない。
英文字によく似た文字だけれど、似て非なるというか……形がそれっぽいだけで、少なくとも自分の知識とは合致しない文字だ。
パタンと本を閉じて、そっと手を放してみる。
すると、何事もなかったみたいに私の手元から離れた本はそのまま宙を漂い、ぷかぷかと浮いていった。
魔法ってすごいのねー。