第1章 出会い
瞬く間に充満した焦げた匂いと、身体中に浴びる熱の感覚に意識は一気に覚醒し、考えるより先に口から悲鳴が飛び出した。
「きゃーーーーッ!?!?」
恐いと評判のホラー映画を見た時だって上げなかった悲鳴だった。
先程までの夢心地など何処へやら。
命を脅かす異常事態にパニックになる私は、慌てふためきながら身体を起こそうとした。
炎に触れないよう半ば仰け反りながらの身動ぎの直後、がん、と後頭部が硬いものにぶつかる。
きっと壁に当たってしまったのだろう。
けれども、そんな痛みは今、全身を蝕もうとする炎の熱気と息苦しさに比べれば些細なことで。
とにかく身を起こさねばと上半身を持ち上げれば、今度は頭頂部をガツンと打ち付けた。
続け様に頭に響いた痛みに呻いて、強かな衝撃を受けたそこへ思わず手を伸ばす。
すると、手の甲が天井に当たった。
ベッドで寝ていたはずなのに、どうして天井がこんなに近くにあるのかしら。
……否、ちがう。
私は、そこで漸く今まで自分が寝ていた場所はベッドでも何でもない、狭い箱のような場所の中であることに気が付いた。
遅すぎる発覚を疑問視している時間はない。
もう一方の手を伸ばした先が炎に触れてしまい、火傷を負ったかもしれない痛みに悲鳴を上げながらも必死になって天井を押した。
硬くて重たい天井を炎が差し込む方向へ力いっぱい押す私の力と、天井を押し退けるように増した炎が勢いが偶然にも合致したらしく、天井が吹き飛ぶようにして一気に開いた途端、私は箱の外へと転がり出た。
炎から逃れて安堵する暇もなく、箱の外へと飛び出した拍子に身体を打って蹲る。
正常な空気を吸う前に幾度も咳き込み、身体中に感じる熱の名残と打ち付けた痛みを纏いつつも、一難去った安堵感の方が大きかった。
「さてさて、お目当ての……って、ギャーーーーーー!!!!オマエ、なんでもう起きてるんだ!?」
「な、なんでなんて言ってる場合じゃないわよーー!……って、えっ!?し、しゃべる狸!?」
「誰が狸じゃーーーー!!!!オレ様はグリム様なんだゾ!」
炎が消えて静まり返った空間で聞こえてきた声に顔を上げれば、目の前に人語を話す狸がいたのだから驚愕した。
呆気にとられる私の叫びに間髪をいれずにノーを唱えた狸ちゃんは、ぷんすかと憤慨した様子で短い手足をジタバタと動かして、こちらに食って掛かってくる。
