第2章 入学式
外から学園長先生の驚き、嘆く声が聞こえてくる。
今日は有り得ないことのオンパレードだ、なんて。
頭を抱えて言ってそうな言葉だった。
こんな事態は、彼が学園長になってから初めてで、どうしていいかわからないそうだ。
このまま中でじっとしていても仕方がなさそうだったので、内側から棺の蓋を押す。
夢が夢じゃなかったかもしれない可能性のせいで、暗闇の中にいると"ひとりぼっち"の不安感が増す一方だったのもある。
ぎい、と音を立てて開かれた棺。
上半身を起こせば、仮面越しでも十分わかるくらいの疲労感と、訳の分からない現象に頭を悩ませる苛立ちを顔中に湛えた学園長先生に出迎えられた。
「そもそも貴方、どこの国から来たんです?」
「実は……」
私が住んでいた住所、通っていた学校名、首都、国の名前等、いろいろと素性を話してみたけれど、どれもピンとくる反応は得られない。
果ては他所の国の有名な地名、海洋、偉人に及ぶ名前まで出して手応えを期待するも、悉く首を横に振られてしまい、お手上げ状態だった。
「私は世界中からやってきた生徒の出身地は全て把握していますが、そんな地名は聞いたことがない」
「そんな……」
だったらここはどこで、私は……本当に何者なの?
この世界に存在しないところから来たっていうの?
でも、魔法なんておとぎ話の世界にしかないもので、非現実の象徴だ。
これが夢じゃないのなら、現実なら、私の故郷は本当にどこにも……、……。
忙しなく脈打つ胸の前で両手を握りしめる。
手首までを覆う、金の刺繍が華やかに施された袖。
一度も着たことのない衣装のはずなのに、当たり前みたいに身を包んでいる布の心地が良いことすらも薄ら寒い。