第2章 入学式
「――――さて、ユウさん。大変残念なことですが……貴方には、この学園から出て行ってもらわなければなりません」
魔法の力を持たない者をこの学園へ入学させるわけにはいかない――。
理に適った言い分だ。学園長先生に告げられた全否定に対し、私は「そうですねー」と、のんびり頷いた。
そもそも、魔力がないのにどうしてこの学園に私が連れて来られたのかは甚だ疑問ではあるのだけれど。
まあ、別に私も"ここに来たい!"と願っていた訳ではないから、出ていけと言われても素直に受け入れられる事態だった。
ただ、一つ心配事があるのなら。
「どうやって帰ったらいいんでしょう?私、この学園がどこにあるのかもよくわかっていなくて、帰り道が……」
「心配はいりません。闇の鏡がすぐに故郷へ送り返してくれるでしょう」
「わあ、ホントですか?よかったぁ」
どうやら闇の鏡は、寮の選別だけを行う道具ではなかったらしい。
最初は怖いと思っていたけれど、闇の鏡さんって親切で便利なのねぇ。
それならすぐに家に帰ることができそう。
とはいっても、結局は夢だから最後は目を覚ませばいいだけな気もするけれど。
その気配もないのなら、夢が示した筋道を辿るが吉だろう。
学園長先生に促されるまま、私は手近な棺の前に立つ。
『扉』の役目を持つこの棺を通じて、『闇の鏡』に優秀な魔法士の資質を認められた人だけが世界中からこの学園へ呼び寄せられる――というのが、この学園のしきたりと教えてもらった。
だから行くも帰るも、この棺の中に身を納めなければならないのだ。
「さあ、扉の中へ。強く故郷のことを念じて……」
「はい。いろいろお世話を掛けましたー」
棺に入り、蓋を閉めてもらう前にぺこりと頭を下げる。おやすみなさい、とサヨナラの意味を込めてのんびり手を振りながら棺の底に後頭部と背中をくっつけた。
「ええ、はい。おやすみなさい」と、口早に返してくれる学園長先生の顔が、蓋を閉められると同時に月のように欠けていく。
やがて訪れた真っ暗闇。
静かに瞼を閉じれば、後はもう夢から覚めるのを待つばかり。
故郷のことを念じなさいと言われたので、いつもの自分のお部屋の景色を思い浮かべておいた。