第2章 入学式
どうやら随分と有名な生徒さんらしい。
残念ながら私には一切心当たりがないので、想像しようにも影も形も思い浮かばなかった。
ええと、どら……どらご、にあ?……どら、こにあ、さん?
名前の響きが、どことなくドラゴンっぽい人ねぇ。
ここは魔法の世界だし、ドラゴンがいても不思議じゃないわねー。
どうせなら一目見てみたいなぁ。
「――――おお、やはり。もしやと思って来てみたが、マレウスは来ておらなんだか。"また"式典の知らせが届いていなかったとみえる」
不在の寮長さんの話で持ち切られていた場に現れた、小柄な生徒さん。
遠目からでも華奢なことがわかったリドルくんと然程変わらない背丈だ。
ともすれば、他の新入生の影に隠れてしまいそうだけれど、悠々と歩いていく足取りは典雅で、その姿はどことなく不思議な存在感を放っていた。
見た目は幼いのに、耳に届いた声は驚くほど落ち着いていて深みがある。
おまけに話し方まで年配の人みたいだから、思わず二度見してしまった。
そんな不思議な彼に、すかさずとばかりにアズールさんが悲し気な声を掛けた。
「申しわけありません。決して仲間はずれにしたわけじゃないんですよ」
あの老人口調の生徒さんの"また"という口振りからして、式典を欠席するのは今回が初めてではないらしい。
声を掛けづらいオーラの持ち主だとか、よく知らない、とか。
聞こえてくる話だけを頼りにすれば、なんだか近寄り難い人という印象だ。
会ったこともない私には判断のしようがないことだけれど。
「ディアソムニア寮の者はわしに付いてくるがいい。……あやつ、拗ねていなければ良いが……」
やれやれといった風に首を横に振った老人口調の生徒さんは、不在の寮長さんに代わって引率を買って出た。
件の寮長さんに対してだろう、まるで小さな子供に対するような心配事を口にしながら新入生を先導していく。
他の寮長らしき生徒さんたちも自分の寮生を引き連れて次々と部屋を出ていく。
賑やかだった空間は嘘みたいに静まり返り、離れゆく足音の余韻が部屋に残される。
そうして、鏡の間には私と学園長先生だけが取り残されたのだった。