第2章 入学式
本当の本当に?と一抹の望みにも等しい可能性に賭けているかのように問われるも、私はのんびりとイエスを返す。
「つまり見知らぬケモノです。もう、さっきからそう言ってるのに……」
「……そ、そうでしたっけ?」
「……あらー?そういえば、言ってなかったかしらー?」
言われてみれば、私も私でちゃんと言ってなかったような気も……?
否定するタイミングがなかったという方が正しいかもしれないけれど。
とにもかくにも、誤解に誤解が重っていたようだ。
学園長先生と二人で顔を見合わせ、鏡合わせみたいに二人揃って首を傾げる。
私たち、ちゃんとお互いの話を聞いてなかったみたいねぇ。
しばしの間、過る沈黙。
「ごほん!では、学園外に放り出しておきましょう。鍋にしたりしません。私、優しいので。誰かお願いします」
「ぎにゃー!離すんだゾ!」
お互いの落ち度は、気を取り直した学園長先生によって華麗になかったことにされた。
そんなことよりも、とばかりに話をすり替えた学園長先生は、グリムちゃんをせっせと追い出す方向にシフトチェンジする。
あわやお鍋の具にされてしまうところだったグリムちゃん。
首輪の部分を持たれて宙ぶらりんにされ、両前足と後ろ足をわたわたバタバタ動かすも、今となっては抵抗にも満たないようだ。
さっきリドルくんがグリムちゃん自身に言ったように魔法が使えない彼は『ただの猫同然』だった。
それでも往生際を得ないグリムちゃんは、渾身の叫び声を上げる。
「オレ様は……絶対、絶対!大魔法士になってやるんだゾー……!」
グリムちゃんの切実ともいえる宣言は、ガシャン、と無情に閉ざされた門の音に掻き消されてしまう。
「なんだか、ちょっとかわいそうねー……」
あれだけ大騒ぎをしてたくさん迷惑をかけた子に対して、同情するのは軽率で無責任なことだとわかってはいるけれど……。
見た目がいたいけな小動物なだけに、元々の動物好きな性格と相まって憐憫の情を抱かずにはいられないのが本音だ。
それに、と。
魔法で手際よく修復されていく周囲の焦げ跡を見やり、騒動の規模と共に追い出される間際のグリムちゃんの叫びを思い返す。