第2章 入学式
「アズール、遊びが過ぎるんじゃないのかい」
「ふふ、リドルさんこそモンスターをいたぶって楽しんでいるのでは?」
「ボクはキミとは違う。くだらないことを言っていないで行くよ」
それぞれを『リドル』、『アズール』と呼び合った二人――赤髪の少年がリドルくんで、メガネの男性はアズールさんというらしい――は、これまでの追いかけっこは序の口だとでもいうような態度だ。
互いに軽口を交わしながらも魔法を放つ手は一切止めない。未だ捕まえられないグリムちゃんに対して、まるで焦った様子もないのが何だか底知れない余裕を感じさせた。
何度となくグリムちゃんへ放たれた魔法は、その身を掠めるばかりで一つとして命中しない。
その代わりといわんばかりに、光は周囲の青い炎へ吸い込まれ、火炎ごと弾けるように掻き消えていく。
……あらー?
そういえば、なんだかさっきよりも熱くないような……?
ふと感じた違和感に辺りを見回す。
立ち込めていた熱気の量が、明らかに違う。
充満していた煙は薄れ、青々と輝いていた部屋の中は薄暗い静けさを増していた。
よく見れば、その理由は一目瞭然だった。
リドルくんとアズールさんが魔法を外すたびに床を這う青い火も、壁や柱に散る火の粉も一つ、また一つと確実に消えていっているのだ。
気付けば、グリムちゃんの逃げ道を覆っていた炎はもうほとんど残っていない。
そうなれば、あの二人を阻む障壁は無いに等しく、グリムちゃんの逃げ場もまた然りだった。
先程までズレていた魔法の軌道が嘘のように――実際、嘘だったのだろう――グリムちゃんに当たり始める。
尻尾の付け根に直撃した魔法の光にイテテと声を上げながら飛び上がったグリムちゃん。
その隙をついて続け様に放たれた魔法が後頭部に当たったことで、着地に失敗して床にスライディングしていく。
「グリムちゃん、大丈夫ーっ?」
「オマエにはこれが大丈夫に見えるのかぁ!――――ふなっ!?行き止まり!?」
思わずグリムちゃんへ心配の声を上げると、ちゃんと聞こえていたらしいグリムちゃんが起き上がりながらこちらに向かって怒り顔を見せてきた。
が、こんなことをしていたら二人に追い付かれてしまうことに気付いて、慌てて走り出す。