第2章 入学式
ここからだとよく見えないけれど、宝石のような飾りのついた細くて短いスティックを胸元で構えている。
ひょっとして、魔法の杖かな。
だとしたら、グリムちゃんが魔法で怪我をしてしまうんじゃないか。
先程の衝撃で転がっていたグリムちゃんを見れば、上半身を起こしてプルプルと頭を振っている。
次いで、彼らが自分を捕まえる気だと察して、そうはさせるものかと四足歩行の体勢を取るや否や駆け出すと同時に炎を吐き出して威嚇した。
今のところは怪我をした様子はなさそうで、ひとしれず安堵する。
でも、多勢に無勢だ。
きっと捕まってしまうのも時間の問題だろう。
「逃げられるとお思いかい?」
「早いとこ捕まえてしまいましょう。ぐずぐずしていると夜が明けてしまいますから」
自分が吐き出した炎を壁にして、あちこちを駆け回るグリムちゃん。追いかける二人も走りながらタイミングを見計らい、グリムちゃん目掛けて魔法の光を撃ち込んでいる。
やっぱり、あの手に持っている短いスティックが魔法の杖らしい。
先端に嵌め込まれた宝石へ光の粒子が吸い寄せられるようにキラキラと集まり、輝きが満ちると赤や白に色付いた光球が次々と撃ち出されていく。
けれど、そのどれもがグリムちゃん自身には当たらない。
今もグリムちゃんの足元を狙った魔法の光は、寸でのところでジャンプしたグリムちゃんのモフモフの体毛を掠めるように通り過ぎる。
直後、勢い良く燃えていた床の青い炎が、撃ち込まれた魔法の衝撃で掻き消えた。
「へへーん、当たるもんか!」
満面に得意げな色を浮かべ、浮かした腰をフリフリと揺らして尻尾を振るグリムちゃん。
続けざまに放たれた魔法。
今度は危なげなく横へ飛び退いたグリムちゃんの脇を抜け、白く輝く魔法の光は燃え盛っていた炎へと飛んでいった。
炎の中で光が弾けた衝撃と共に強い風が巻き起こると、たちまち周囲の火炎が霧散する。
自分に悉く当たらない魔法に対して「ヘタクソなんだゾ!」と、前足を二人に向かって指したグリムちゃん。
再び放たれた魔法から逃れるべく、前方に吐き出した炎の隙間を縫うように駆け抜けていく。
あれだけ魔法を撃たれているのに、ひょいひょいと避け続ける姿は見事なものだった。
すばしっこいのねー。