第2章 入学式
沈黙が不自然な間を以って満ちていることに違和感を抱いたのは私だけではないようで、後ろの生徒さんたちも様子がおかしいことに気付いているみたい。
次第に不自然な自体を訝しむ声が細波のように聞こえ始める。
「静かにするように!」と、諫める声を厳しく響かせる誰かの声を背後に湛えながら、私は部屋全体の空気に先程までとは異なる妙な緊張が走り始めるのを肌で感じていた。
誰かの一喝によって、ざわめきが収まってもまだ闇の鏡はうんともすんとも言ってくれない。
恐ろしい顔とにらめっこ状態に置かれたまま、私は段々途方に暮れるような心地に苛まれていった。
あの、私の魂のかたちは……?
そんなに勿体ぶられるほど、すごい何かが自分の中に秘められている可能性――は、さすがになさそうねぇ。
手持無沙汰な待ち惚けにいよいよ困ってしまって、学園長先生に助けを求める視線を送る。
振り返った先では、ふむ、と顎に手を掛けた学園長先生が何やら考え込んでいる様子だった。
相変わらず、その手に持つ鞭の先っぽで狸ちゃんがもごもごと呻いてもがいている。
はやく答えてくれないと狸ちゃんもずっとあのままだから、何だか忍びないわー……。
『――――わからぬ』
…………え?
たっぷりと重たく浸透していた静寂が突如として破られた。
重々しい声色に反して、あっさりと告げられた一言の衝撃たるや。
青天の霹靂を味わったのは、選別を受けられなかった私だけでなく、この場にいる誰もがそうだったに違いない。
知らず息を潜め、学園長先生に向けていた顔をゆっくりと前に戻す。
耳を疑う事実を口にしたはずの仮面然とした大きな白い顔は、依然として一切の表情を浮かべていない。
けれど、彼――と称していいのかわからないけれど――が『わからぬ』と口にしたのは紛れもな事実のようで……。
「なんですって?」
学園長先生にとっても予測できなかった返答らしい。
他でもないこの学園のトップが嘘偽りのない驚愕を示したことで、悲しいかな、先程の闇の鏡の言葉の信憑性がより増してしまう。