第2章 入学式
この場に学園長先生がいないのは腹痛によるものだと納得しかけたところで、当人たる学園長先生が「違いますよ!」と声を上げた。
周囲に自分が戻ってきたことを知らしめるべく、靴音とステッキをわかりやすく鳴らしながら足早に部屋の中央を歩いていく学園長先生。
置いてけぼりにされてしまわないよう、私も後ろをついていく。
その様子は、さながら親鳥からはぐれないようにする雛だ。
学園長先生の姿を見つけて「あ、来た」と、誰かが呟く。
中央の一番奥に鎮座する大きな鏡の前で立ち止まった学園長先生は、両手を腰に当てて「まったくもう」と溜息を零した。
新入生が一人足りないので探しに行っていたのだと離席の理由も話す学園長先生に対して、一応といった風に周囲が納得を示す素振りを見せる。
次いで、一人足りなかった新入生こと私を見やる生徒さんたち。
こんな形で登場したものだから変に注目を集めてしまうのも致し方ないことだ。
そして、何故か一人だけ迷子になっていた私に対する心配だとか、見つかって良かっただとか、そういった歓迎ムードが一切ないこともまた致し方ないことみたい。
どこの世界でも、堅苦しくて冗長な入学式を好ましく思っていない生徒の分母は多いもの。
もしも彼らの視線が具現化したなら、きっと先端は槍みたいな鋭い切っ先をしているに違いない。
物言いたげどころか、やっと終わると思っていたのに、という苛立ちが大層雄弁に視線に込められているから、四方八方からチクチクと肌を突き刺されているみたいな心地でもあった。
入学式に間に合わなかったどころか、全然歓迎されてないムードねー……。