第7章 異世界の朝
「遅いんだゾ!」
「ごめんね、グリムちゃん。……はい、これでキミもバッチリねー」
グリムちゃんを迎えに部屋へ戻ろうとしたら、意外にもバスルームから出てすぐのところで、彼は私を待ち構えてくれていた。
てっきりお部屋にいると思ったのに、待ちきれなくて迎えに来てくれたのかもしれない。
器用に前足を組んで仁王立ちしているグリムちゃんからピシャリと一喝され、苦笑しながら彼の目線になるべく近くなるよう膝を折る。
お詫びも兼ねて、お耳の青い炎と同じくトレードマークであるリボンの結び目と位置を整えたら、良きに計らえといったように見上げられた。可愛い。
水浴びするだけで何でこんなに時間が掛かるんだと問われたので、なかなか水もお湯も出なくて苦戦してたことを話したら「ふなぁ……この寮、どこまでオンボロなんだゾ」と、半目で呟かれたので「そうねー」と、のんびり同意する。
人間の暮らしに詳しくないモンスターであるグリムちゃんからも、この言われようなのだから寮の不便さは相当だ。
でも、今後ここで暮らしていくなら少しずつでも直していきたいわねー。
DIYなんてやったことないけれど、必要なこととあらば挑戦する他ない。
グリムちゃんも手伝ってね、と言うと「ヤなこった!」と舌を出されてしまった。あらまあ。
学園長先生が待っている談話室まで下りると、意外な姿を目撃することとなった。
この不便極まりない設備の中でどうやって用意したのかわからないけれど、綺麗に洗浄されたティーカップで紅茶を飲んでいたのだ。
一人掛け用のボロボロのソファで、長いおみ足を組んでティーカップを傾ける姿は、朝陽が差し込む荒れ果てた背景と大変ミスマッチながらも優雅な雰囲気もしっかり漂わせている。
曰く、ティーカップも紅茶も魔法で用意したもので、綺麗な状態にするくらいならお手の物なんだって。
それこそ朝飯前というやつなのだろう。
実際、朝食はまだだものねー。