第1章 出会い
曰く、この学園へ――どの学園なのかはともかくとして――入学する生徒は、すべて扉をくぐって、この学園へやってくるらしい。
つまり棺は扉の代わりということでいいのかしらー……?
会話の流れからして薄々勘付いてはいたけれど、ここって学校だったのねー。
それで、私はこの学校に入学したばかりの新入生――という設定の夢みたい。
なるほどー……?
これまでのチンプンカンプンな状況を何とか嚙み合わせるようにゆっくり整理していく私の前で、仮面の男性は何やらぶつぶつと呟いている。
「通常、特殊な鍵で扉を開くまで生徒は目覚めないはずなんですが……」
「特殊な鍵……?よくわからないですけど、その子が炎で棺を開けようとしていて、それで……」
私も炎から逃れるために必死になって棺の蓋を押したから、奇しくもそれで外に出たという流れを説明すると、仮面の男性は目元の金色の光にジトリとした気配を漂わせて、グルグル巻きにされた狸ちゃんに向けた。
私が鍵を使わずに扉から飛び出した原因――もとい、元凶はこの狸ちゃんにあるのだと文字通りに睨んでいるらしい。
もがもがと呻き続けている狸ちゃんに私も視線を向ける。
いい加減、解いてあげたらいいんじゃないかしらー……。
この人からしてみれば扉を勝手に開けた元凶ではあるし、私にとっても炎で脅してきて追いはぎまでしようとしてきた子ではあるけれど、さすがに可哀想に見えてきたわー……。
なんだか小動物を虐めているみたいで……気が引けるどころか、自由になりたくて藻掻く姿に心がだんだん痛んでくる心地にすらなってくる。
が、私の心配事なんて何のその。
仮面の男性は、次いでジト目の矛先を私に向けてきた。
……え?あらー、どうして?
「連れてきたのなら、ちゃんと責任もって面倒を見なさい」
「連れてきた覚えはないんですけど……」
「……おっと!長話をしている場合ではありませんでした。早くしないと入学式が終わってしまう」
正真正銘、あの狸ちゃんとは今日が初対面なのに。
責任の持ちようがないことを訴えかけるも、男性は狸ちゃんを私が使役する使い魔だと断定しているので、見事にスルーされてしまった。