第7章 異世界の朝
昨日、グリムちゃんと埃塗れのベッドで眠りにつく前――きっと、朝になれば全部元通りになっていると思っていた。
一抹の望みをかけながら閉じた目を開ければ、いつも通り自分の部屋のベッドで寝ていて……傍にはグリムちゃんではなく、飼っている猫が丸まっていて、よく寝たわねーなんて言いながら、いつもの朝を迎える――。
そんないつも通りの朝を想像していた。
でも、違った。
当たり前みたいに、当たり前じゃない非日常の続きが再開されていると、やっぱりこれが現実なんだと認識する他ない。
シャワーから流れ落ちる水を纏った姿見を見つめながら、目の前に映る自分の顔に触れる。
「……現実、なのね」
認めざるを得ない実感を伴った胸が少しだけ重くなる。
けれど、泣きたくなるほど哀しいわけじゃない。
ただ、今まで当たり前だったものが、全部遠くなってしまったような気がしただけだ。
それが、哀しいというよりも"寂しい"と思えるから余計に切なかった。
この魔法と非現実が交差する不思議な世界で、これから生きていくのだと漠然と理解しながら……小さい頃、親や兄とはぐれて迷子になったときのことを何となく思い出した。