第7章 異世界の朝
建付けの悪いドアがノックされたので、どうぞーと入室を許可すると、現れたのは学園長先生だった。
「おはようございます、2人とも。よく眠れましたか?」
「おはようございます、学園長先生ー」
「ベッドに寝そべったら底が抜けてびっくりしたんだゾ!」
「そうねー、大変だったね」
昨夜のお部屋探索を簡単に思い出す。
最初にここでいいかと選んだお部屋のベッドは、やっと寝られる!とグリムちゃんと共に勢い良くダイブした拍子にバキィという音と共にご臨終。
次の部屋に移ると、そこはネズミと蜘蛛とその他の虫など、先住民がたくさんいたから諦めた。
また次は、廊下の一番端に位置する部屋だった。
一番汚れが目立ったもののベッドは頑丈そうだったし、試しにグリムちゃんが数回飛び跳ねてみたらマットレスはかなり軋んだものの、最初の部屋みたく床が抜けないのが決め手となった。
寝られないよりマシだと判断した結果、このお部屋を自分たちの部屋にすることに決めたのだ。
疲労ですっかり眠気がピークだったから、お掃除するのも諦めて、埃塗れのベッドに横たわったことがついさっきのことのように思い出せる。
実際、三、四時間くらい前のことだ。
どんだけオンボロのまま放置してたんだ?とグリムちゃんがジト目で学園長を見やる気持ちはよくわかる。
おまけに朝はゴーストに起こされるし――私はグリムちゃんの炎だったけれど――昨日から大変な目に合い続けて、息つく暇もないわねぇ。
文句を言うグリムちゃんが再び埃にお鼻を刺激されてクシュン、クシュン!と、くしゃみを連発している隙に学園長先生が私に顔を向けてくる。
君はどうでしたか?と尋ねられたので、疲れてぐっすり寝たことを素直に話した。
「異世界に飛ばされてきたというのに図太くて大変よろしい!」
「はいっ。おかげさまですねー」
褒められてニッコリ笑うと、学園長先生もうんうんと笑顔で頷いてくれる。
私が異世界から来たことは内緒にしないと厄介――学園長先生は最初『面倒』と言い間違えていた――なので、グリムちゃんも知らないことだ。
幸い、くしゃみで前半の『異世界』の部分を聞き逃したらしく「"図太い"って褒められてねえ気がするんだゾ……」と、お鼻を前足で擦りながら呟いていた。