第7章 異世界の朝
昨日の夜、暗闇の中で突然現れたゴーストを見た時は、ただただ恐ろしかったのに。
その真っ白な霊影が、こうして明るい場所で眺めてみると……なんだか思っていたよりも怖くないのだ。
それに待てど暮らせど一向にこちらを攻撃してくる気配もないし……少なくとも、今すぐ私たちをどうこうするつもりはなさそうだった。
危ない感じがしないなら、無理に追い出す必要もないのではないかとも思ってしまうくらいには、恐怖感も危機感もすっかりおざなりになっていた。
のんびりと首を傾げる私の横で、グリムちゃんだけは変わらず警戒を怠らず、臨戦態勢で身構えているけれど。
やがて、ゴーストたちはひとしきり私たちを揶揄って満足したのか、一体、また一体と姿を消していく。
最後の一体も虚空へ溶けゆくように消えてしまえば、楽しそうな声色が折り重なった笑い声だけが少しの間、部屋の中に残された。
……なんだったのかしらー?
「くそー。いつか追い出してやるんだゾ!」
「そうねー。さっきは何ともなかったけど、また悪さされたら困るから後で一応お塩撒いときましょうか」
昨日、確かにグリムちゃんと追い出したはずのゴーストたちがああしてケロッとして戻ってきたのなら、ひょっとしたらこの土地に留まり続ける地縛霊なのかもしれない。
だとしたら効くかわからないけれど、まあ、怖い思いはしないに越したことはないので、気休めくらいにはなるだろう。
あくびを零しながら伸びをすると、空気に充満した埃っぽさと、昨夜の雨の名残を吸った湿気た木の匂いがツンと鼻腔を突いた。
同じく伸びをしていたグリムちゃんが、はくしゅん!と、くしゃみをすると青い火の粉が口から吐き出されていた。
あらあら、まずは空気を入れ替えないといけないわねー。
ベッドを下りると窓を開けて、朝の空気を部屋に招き入れる。
窓の縁や枯れ木の枝先に溜まった雨粒が朝日を弾いてキラキラと輝くのを眺めながら、お洗濯日和ねー、なんて呑気なことを思った。
すると、部屋の外から靴音が聞こえてきた。