第8章 お見合い
***
私も零くんも仕事が忙しくて、あまり会えないままお見合いの日の前日になった。
やっと大きな仕事が一つ片付いたらしく、今日は久しぶりに会える。
零くんは警視庁で残処理を片付けてから迎えにくると言っていたから、その間に明日のお見合いに向けて美容院で身なりを整えにいく。
本当はボッサボサで行きたいけど。父から "断るからといって失礼がないように。最低限の礼儀は尽くすこと。" と、しつこく言われているので、その後に控えている零くんとの挨拶のために、このくらいのご機縁は取っておくことにした。我ながらえらい。
お昼ごろ美容院を後にし、少し前にできた大きなショッピングモールをうろうろしていたら、零くんから電話がかかってきた。
『お待たせ。今終わったからそっちに行くよ。待ってて。』
「おつかれさまー。早かったね!私いま外出中で、戻るのに30分くらいかかる場所だからゆっくりでいいよ。」
『いや、そこで待ってて。杯戸町のショッピングモールだろ?』
「へ?」
『どうした?誰かと一緒か?』
「え?いや、ひとりだよ?」
『わかった、着いたら連絡する。』
と言って電話を終えた。
・・・妙だな?
今日私は零くんに、どこに行くとも言ってない。
なのになぜどこにいるかまでわかった?
あぁぁぁぁ!!私、いつから忘れてた???
前に受け取ったバッチ!防犯ブザーって言われて、お互いの位置はわからないって言って渡されたけど、
あのとき『ぜったいスマホで見れるんだろどうせ』 って思ってたのに!!!
それを忘れたまま、ただの防犯ブザーとしてかばんにつけてた!
やばい。あれを受け取った日からの自分の行動を思い出せ……!
無理だ!もらったの結構前だ!いや、大丈夫。変なところになんか行かないから。
うん、これもう忘れよう。考えても無駄だ。事後だ。手遅れだ。
それにしても!あのとき『位置はわからない』って断言したくせにっ!
めっちゃ位置見てるうえに、見てることを隠すことなく『杯戸町のショッピングモールだろ?』は変だろ!?
怒っていい案件だよこれは。