第12章 それで十分 ※
「あと、遅くなってすまない。
こんなタイミングで渡すべきではないんだが……」
そう言って、一緒に選びに行った婚約指輪を見せてくれた。
「ううん、嬉しい。
私たちは必ずしも明日も一緒にいられるとは限らないから、今できることを後回しにせず、後悔しない日々を生きていきたい。
零が帰ってこなかったときに、やっとそのことに気付いたの。
注文していた指輪も、もう…零からは受け取れないんじゃないかとさえ思った。
だから、ありがとう。」
そう言うと、零は私の左手をとり、薬指に指輪をはめてくれた。
センターのダイヤモンドは、桜の模様が浮かび上がるよう繊細にカットされていて、とても美しい。
警察官としての誇りを強く持つ、零のようで。
「桜……零をつけてる気分になれるね。」
「幸せにするよ。必ず。僕と結婚してよかったと最後のときまで思ってもらえるように。」
「ありがとう。私も、零を幸せにするね。私と結婚してよかったと思ってもらえるように、たくさん笑わせてあげる。」
――――…淳くん、
助けられなくて、何もできなくてごめんね。
私は、あのとき淳くんから元気をもらったのに。
あなたが違う道を歩んでいたら、
きっとこんな最後ではなかったのに・・・
【それで十分】
fin