第2章 君を心配するあまり
* *
一次会が終わり、同僚たちがそれぞれ二次会へ向かったあと。
「さん、このあと二人で飲みに行かない?」
「あー…ごめん。今日はけっこう飲んじゃったし、もう帰るね。」
「いいじゃん。もうちょっとだけ付き合って!」
「ごめんね、ほんとに帰らないといけないから」
笑って断ったけれど、男は引かなかった。
「ねぇ、さんは彼氏いるの?」
「……いるよ。」
「ふーん。まぁでも、ちょっとくらいいいじゃん。会社の飲み会なら彼氏も許してくれるっしょ!」
「いや、そういう問題じゃないから……」
「ほら、行こうよ?ね!」
腕を掴まれて引っ張られた。
「えっ……ちょっと、やめて。離して、本当に帰りたいから!」
振りほどこうとしたけれど、力が強くて全く歯が立たない。
「ほんとにやめて……!」
「いいって、ちょっとだけだから。俺、前からさんのこと気になってたんだ!この機会にもう少し話そうよ。別の部署だとあんまり交流ないからさ。ね?大丈夫だから。」
怖い。酔ってるのかかなり自分勝手になってる!
これでも同じ会社の人だから、大声を出して変質者扱いすることもはばかられる。
周囲には人がいるのに、居酒屋がおおく賑わっている場所のため、誰もこちらを気にしていない。
「お願いだから離して……」
声が震える。目に涙が浮かんだ。
そのときだった。
「――何してる?」
低い声がした。
引っ張る男の手が、ぴたりと止まった。
振り向くと、見慣れた金髪、褐色の肌。
「……れ………とおる…さん?」
その瞬間、心の底から、ほっとした。
「」
普段の穏やかな表情はなかった。
「その手、離してもらえるかな」
静かな声だったけれど、男は一瞬で手を離した。
「……彼氏?」
「そう、だよ。」
透さんは庇うように私の前に立った。
「嫌がってるの、分からない?」
「いや、俺は別に……」
「別に、何?」
透さんの目が細くなる。
男は何も言えなくなり、やがて
「彼氏が迎えにくるなら言ってよ……じゃあ、また会社で…」
と小さく呟いて去っていった。
零はその背中をしばらく見ていた。