第4章 見てはいけないもの
「こんな状況で付き合っているのに、矛盾していると思う。でも……組織のことには、を巻き込みたくなかった」
「……」
「奴らは平気で人を殺める。一般人だろうと関係ない」
その言葉に、背筋が冷たくなる。
「だから、をただのポアロの常連客の一人として扱って、奴らが興味を持たないようにしたかった。」
「は仕事で外出することが稀だから、平日の日中は会社にいるだろうと油断していた。まさか会うとは思わなくて……何の説明もなく、嫌な思いをさせて悪かった」
そして、真っ直ぐに私をみた。
「……許してくれないか?」
「…………」
何か言わないと。
不安にさせたくない。
でも、何を言えばいいのか分からない。
「あ……の……」
口から出たのは
「……いつから、マンションの下で待ってたの?」
だった。
「…………」
零くんも固まる。
今、それ?って、自分でも思った。
私、何を聞いてるんだろう。
パニックになると、本当に会話が噛み合わなくなるんだ。
それとも、現実逃避?
けれど、零くんは何も突っ込まなかった。
ふっと微笑んで答える。
「んー……一時間くらい前、かな」
「……一時間?」
「車の中で待っていた。が歩いてくるのが見えて、そこで出てきたんだ」
「…………」
嘘だ。
留守番電話の『今から家に行く』は、もっと前だった。
私が帰ってきたのは11時を過ぎていたんだから。
3時間はたってる。ここで待っていたか、会社や駅の近くを探していたのかも知れない。
電話にも出ないし、メッセージにも反応しない。
それでも、誤解を解くために。
仕事でつかれてるのに……
そこでようやく気付いた。
自分がなんでいきなり『いつから待っていたのか』なんて聞いたのか。
パニックになったわけじゃないし、
現実逃避したわけでもない。
許す理由を探したんだ…。
零くんからの誠意を、実感したかったから聞いたんだ。
自分が恥ずかしい。
誤解なんだからすぐに許せばいいのに、心の狭さが嫌になる。