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ずっと前から (降谷零/R18)

第4章 見てはいけないもの


「」

何杯目かのグラスを置いたところで、詩織がこちらを見る。

「外出から戻ってから、なんか元気なくない?」

「え?」

「何かあった?」

やっぱり顔に出ていたらしい。

「ううん。何もないよ。ちょっと見たくないもの見ちゃって少し落ち込んでた。でももう平気。気にしてくれてありがとね?」

「そっか」

詩織はそれ以上深く聞かなかった。
その優しさに救われる。

彼氏がいることは話しているけれど、彼がどんな仕事をしているのかも言ってない。というか言えない。
だから今日のことも、話せない。

「それより、聞いてほしいことって何?」

「あっ!」

詩織の顔がぱっと明るくなる。

「実はね、彼氏ができたんだ~!」

「えっ、本当に!?」

「うん! には早く伝えたくて!」

前の彼氏は、いわゆるダメ男だった。モラハラだし。

相手の執着がすごくて別れるときも大変で、詩織もしばらく引きずっていたから、ずっと心配していた。

「おめでとう…! ほんとによかった」

心からそう思った。

「どんな人なの?」

「婚活パーティで知り合ったんだけどね、すごく優しくて真面目で穏やかな人。公務員してるんだって~」

……公務員?
それをキーワードに、また昼間の光景が脳裏に浮かぶ。
やめーーい!思い出したくないっ!!飲む!!!

「へぇ!優しくて穏やかなら安心じゃん!いい人みつかってよかったよー!」

その婚活パーティー、私も行きたいっ!!!浮気しない人と出会わせて!!泣きたい!!って心の中で叫んだ。

心の中で泣きながら、いつもより少し早いペースでグラスを空けた。
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