第4章 見てはいけないもの
「」
何杯目かのグラスを置いたところで、詩織がこちらを見る。
「外出から戻ってから、なんか元気なくない?」
「え?」
「何かあった?」
やっぱり顔に出ていたらしい。
「ううん。何もないよ。ちょっと見たくないもの見ちゃって少し落ち込んでた。でももう平気。気にしてくれてありがとね?」
「そっか」
詩織はそれ以上深く聞かなかった。
その優しさに救われる。
彼氏がいることは話しているけれど、彼がどんな仕事をしているのかも言ってない。というか言えない。
だから今日のことも、話せない。
「それより、聞いてほしいことって何?」
「あっ!」
詩織の顔がぱっと明るくなる。
「実はね、彼氏ができたんだ~!」
「えっ、本当に!?」
「うん! には早く伝えたくて!」
前の彼氏は、いわゆるダメ男だった。モラハラだし。
相手の執着がすごくて別れるときも大変で、詩織もしばらく引きずっていたから、ずっと心配していた。
「おめでとう…! ほんとによかった」
心からそう思った。
「どんな人なの?」
「婚活パーティで知り合ったんだけどね、すごく優しくて真面目で穏やかな人。公務員してるんだって~」
……公務員?
それをキーワードに、また昼間の光景が脳裏に浮かぶ。
やめーーい!思い出したくないっ!!飲む!!!
「へぇ!優しくて穏やかなら安心じゃん!いい人みつかってよかったよー!」
その婚活パーティー、私も行きたいっ!!!浮気しない人と出会わせて!!泣きたい!!って心の中で叫んだ。
心の中で泣きながら、いつもより少し早いペースでグラスを空けた。