第3章 嫉妬心
そのとき、カラン、とドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ!」
梓さんがが振り向き、つられて私も入口を見た。
「……あ」
思わず声が出た。
入ってきた、黒髪ニット帽、綺麗な顔立ちの長身男性。
向こうも、私を見て、
「ああ」と目を細めた。
「君は、このあいだの……」
信号待ちをしていたとき、急に目の前が暗くなり、身体から力が抜けて、
倒れそうになったところを、この人が支えてくれた。
近くのベンチまで連れて行ってくれて、
自動販売機で温かい飲み物まで買ってくれた。
「病院へ行くか?」
「いえ…ただの、貧血です、すみません…」
「そうか」
そう言って、体調が戻るまで隣に座っていてくれた。
「もう大丈夫です。ありがとうございます。」
と伝えたとき、
「そうか」
と彼はふっと笑って、そのまま去っていった。
名前すら聞けなかった。
「このあいだは、本当にありがとうございました」
は立ち上がって頭を下げた。
「きちんとしたお礼も伝えられなくて、すみません」
「気にするな」
彼は優しく笑った。
「無事なら、それでいい」
「ありがとうございます」
「体調はもう大丈夫なのか?」
「はい。もう大丈夫です!」
「そうか」
その会話を透さんは、黙って聞いていた。