第12章 それで十分 ※
入店したものの、心配すぎて食欲がない。
とても食べられそうになかったため、ミルクティーだけ注文した。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。
……あれ?新しいバイトの方ですか?」
「はい。松永淳といいます。まだ3日目でわからないことだらけなんですが、よろしくお願いします。」
「あ…いえ、そんな。 です。こちらこそよろしくお願いします。」
「さんはポアロにはよくいらっしゃるんですか?」
「そうですね。会社が近くなので休憩でたまに、です。」
いきなりファーストネーム呼びした…。
人懐っこい人。コミュ力が男版の梓さんだ。
梓さんがカウンターから声をかける。
「安室さん、探偵の仕事が忙しくなってシフトに入れない日が増えてきたので新しい人を入れることになったんですよ。」
安室さんという名前にドキッとした。
連絡が取れない状況だけど、ふつうにしておかないと。
「そうなんですね。松永さん、仲良くしてくださいね。」
にこっと笑っておいた。
「はい。もちろんです!」
若そうだな。何歳なんだろう。
大学生……とかかな?
「あの、さんは何のお仕事をされているんですか?」
「会社の事務ですよ。松永さんは、ここのバイトと…大学生、かな?」
「はい、なのでバイトは卒業までになっちゃいますが。
そういえば、まだ安室さんにはお会いできていなくて、どんな方なんですか?」
なぜ…私に聞く?
そこはバイト仲間の梓さんに聞いて?
今は透さんの話するのつらいのに。
「どんな方って言われてもなぁ。
見た目は金髪イケメンで爽やかな笑顔、
中身は……ふふっ。そこは松永さんが自分で会って知ってみてください。」
「え!なんですか今の。まさか怖い人ってことですか!?」
透さんはよく気が効く優しい穏やかな人。
でも零は、俺様で子どもっぽいところがある。
松永さんは気さくで、話が途切れない。
カウンターで洗い物をしながらでも、ずーっと話しかけてくれていた。
―――― 零、会いたいよ。
ここに零じゃない男性がいることが、
無性に寂しかった。