第12章 それで十分 ※
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「零、ありがとう。」
「どういたしまして。仕上がったら僕が取りに行くよ。」
「うん、楽しみ。私も零に何か贈りたいな。」
「ははっ。僕はいい。がもらえるなら他は何もいらない。気持ちだけ受け取っておくよ。」
「それは私も同じなんだけどなぁ。」
「あぁ、分かってる。それでも、僕が贈りたいんだ。結婚式もできないし写真も撮れない。せめて形として残せるわずかなものとして。」
なぜか、急に嫌な予感があった。
こういう会話は何度もしたはずなのに。
怖い。失ってしまう。そんな不安が強く襲ってきた。
「?どうした?」
零が心配そうに顔を覗き込む。
「ううん、何でもない。零……何があっても、自分が生き残れる道をあきらめないで?ずっと傍にいてね。」
「不安になったのか?大丈夫、分かってるよ。」
近付けば近付くほど、失うのが怖くなる。この不安が、ただのそれだだと思いたい。
その日から数日経ったある日、零からの連絡は1日中なく、夜も帰ってこなかった。そんな日は、たまにある。
そしてその翌日も、零からの連絡はないまま過ぎていった。
今回はなぜか言い表せない不安が襲ってくる。
こういうときは、零がどんな状況にあるかわからなないため、むやみに連絡することも控えている。
メッセージ1通送ることができないのは、潜入先で緊迫した状況にあるんじゃないかと思っている。
怖い。このまま連絡が取れないまま、行方不明で片付けられるのではないか?
傍にいるという約束さえ、守ることが難しいほどの危険な任務という実感。
私には、何もできない。力になるどころか状況さえわからない。無力すぎて、情けない。
連絡がないまま5日経ち、零の面影を求めて、仕事の休み時間にポアロへ寄った。
どうしようもなく不安だった。
――カラン
「いらっしゃいませ〜!あっ、さん!」
いつもと変わらず、梓さんの元気な声が聞こえてくる。
「こんにちは、梓さん。
このあいだはお騒がせしてすみません。」
「ふふっ。いいんですよ〜!お二人の仲がよくて羨ましくなっちゃいました。
あっ。お席へどうぞ!」