第9章 記憶
「うぅぅ…。」
「あぁ。僕の匂いが好きなんだったな?優しくてまろやか、だったか?」
耳元でそう囁かれる。
「!!? な、な、なんで!?」
「が教えてくれたんだろ?あんなに積極的に。ククッ。いつも抱かれてるときに匂ってたのか?」
「ち、違うから!!ひぇぇ…もうどこかに埋まりたい……!!!」
「ははっ。僕の腕の中なら埋まってもいいぞ?ついでに匂いも堪能できるだろ?ほら。」
「もう……っ!ほんっとにからかわないでっ!!!」
零くんはくすくすと楽しそうに笑ってる。
夢の中(記憶がないあいだ?)でも私と言い合いしてふざけていた零くんは、どこか怒っているみたいだったけど、今はすごく嬉しそう。
「・・・言えなかったんだ。」
「え?」
また急に真剣モードに切り替えてきたな。トリプルフェイスの実力恐るべし。
「目を覚ましたとき、記憶が戻っていることに気付いたけれど、は記憶がなかったことも覚えていないようだった。
記憶を取り戻したばかりの不安定な状態でそのことを伝えたら、もしかするとまた元に戻ってしまうんじゃないかと不安になった…。
また、僕を忘れてしまうんじゃないかと怖かったんだ…。」
「あ…!ごめん、私、自分のことしか考えてなかった…。忘れられていた零くんがどれだけ不安だったか、考えたらわかることなのに…。」
「いや、いいんだ。すぐに言えなくて悪かった。それに、現実逃避して誘いに乗ったのも悪かった。何事もなかったかのようにして安心したくなったんだ……。」
「もしかしてそれであんなにやさしかったの?」
「ん?あぁ、激しくしてまた忘れるんじゃないかと思うとな。」
「そうだったんだ…。あんなの初めてだし、最初わけがわからなくて、零くんが疲れてて情緒不安定なのかなって思って…。
記憶がなかったってきいたあとは、もしかして忘れている間の私が零くんに何か、その…ことについて…言っちゃったのかもって…。」
「たとえば?」