第9章 記憶
「…………この匂い、知ってる」
「え……?」
僕の首あたりから急に匂いを嗅ぎはじめた。
「ゆ、?」
「懐かしいような…いつも匂っていたような…そんな匂いがする。
優しくてまろやかで、すごく好きな匂い。」
「ははっ。まろやかって、なんだそれ。は僕の匂いが好きだったんだな。初めて知ったよ。」
「え!?うそっ!」
「そんなこと、の口から聞いたことなかった。こっそり匂ってたんだな。は……何を考えてるかわからないから。」
「ふふっ。記憶がなくなる前の私は、もしかして降谷さんに一目惚れした?」
「さぁ。それもきいたことはないな。でも、『無駄に顔が良い』とはよく言ってたよ。」
「顔が好みだったのはわかる。ふふっ。空港で会ったときびっくりした。こんなイケメンと付き合ってるの?って。」
「……なんだか最初に会った頃を思い出すよ。あの頃のは、こんな感じだったから。」
「じゃあ、最近の私はどんな感じだったの?」
「素が出てたな。僕の扱いも雑になってた。」
「えぇ!?こんなイケメンを雑に扱ってたの!?」
「あぁ。もうずばずば言ってたよ。でも、思いやりがあって強くて真っすぐなところは、最初からずっと変わってない。」
「……降谷さん、私のことすごく好きだったんだね。そんな顔して思い出すくらい。」
「あぁ。そうだな、愛していたから―――… 苦しくて、どうしようもないほどに。」