第9章 記憶
「――はい。でございます。」
「……はじめまして。さんとお付き合いさせていただいている降谷と申します。さんのことで、お伝えしたいことがあります。先程のアメリカでの爆弾テロに彼女が巻き込まれ、いま意識がありません。搬送先の病院は――――…」
電話に出たの母親の声は、動揺していたものの、に似ていた。
淡々と状況を説明した。
自分でも何を言ったのかわからない。頭が回らない。
彼女の母は、がアメリカ旅行中だということも知らなかったようだ。自由ならしい。夫婦ですぐにアメリカへ発つという。
こんな状況で、公安の自分は身動きを取れないことがもどかしい。
電話を切ってしばらく後、知らない番号から着信があった。
「……はい」
『降谷くんか?の父だ。』
「……!はじめまして、降谷です。
この度は大切なお嬢さんを守りきれず…申し訳、ありません…。」
『……いや。先程は連絡をありがとう。いち早く連絡をくれたおかげで今日の便でアメリカに行けることになった。君はどうする?』
「申し訳ありません――…事情があり身動きが取れない立場にあります。」
『そうだろうな。君は、警察官と聞いたが、公安の人間か?』
「……!」
『先程、妻に“爆弾テロ”と伝えたそうだな。
まだ爆発からほとんど時間がたっていない。爆発の原因がなにもわかっていない状況で、いくら警察といえどそんな情報をいち早く得られるのは公安だろう。
そして、開口一番に君は私に謝罪した。
爆発とは全く関係ないはずの君が、だ。
テロが起こる可能性があることを事前に知っていたんだな?』
「……! …申し訳…ありません。」
『いや、君を責めているわけじゃない。
できる限りの手を尽くしてくれたんだろう。
妻にも、爆弾やテロのことは世間で未公表のうちは口外しないように伝えてある。口はかたい方だから安心してくれ。
それよりも。
優秀な公安ともあろう者が、一般人に情報を漏らすほど動揺していてどうするんだ?
娘はそんなにヤワじゃ無い。昔から運がいい子だ。
必ず助かる。君はしっかりしろ。今は自分がするべきことを全うするんだ。娘のことは、私達に任せてくれ。』