第8章 お見合い
「ふふ。お久しぶりです、佐藤さん。」
と、愛想よ~く微笑んでおいた。ほんと誰?佐藤さんって日本に何百万人いると思ってるの?
「覚えていてくれたんですね。久しぶり、ちゃん。」
んんー?さらっとファーストネームで呼んだな?仲良かったってこと?
こっちはファーストネームがわっかんないから名字のままいかせてもらうけどね!
と思っていたら、母からフォローが入った。
「尊くんとは、小学校のとき以来かしら?低学年のときに引っ越しちゃったものね。」
ナイスフォロー!さっすが母。
我が家は母のアシストがあってこそうまく回ってると言っても過言じゃないよ。
なるほど、"たける" ね。はいはい。えっと?過去一で脳をフル回転させて記憶を遡る。あ、佐藤尊に一致する人物がいた。
こんな顔だっけ、子どものころだから印象違う。
てかそんな昔の人物なら先に教えておいて?なに勝手にスリルを楽しもうとしてるのうちの両親は!
「そうだね。佐藤さん…えっと、また“尊くん”でもいいかな?引っ越してからどうしてたの?」
ふぅ。我ながらナチュラルに名字呼びからファーストネーム呼びに移行できたと思う!えらいよ自分!
尊くんが引っ越したあとのことを簡単に教えてくれた。
整った顔立ちでさわやかな好青年だなー。話もくどくないし、自慢もないし、真っすぐに育って。
もっと嫌な人だったら断っても心が傷まなかったのに!
「ちゃんは、いまどうしてるの?」
「私はふつうに会社員だよ。米花町のあたりに職場があるの。」
「そうなんだ!僕の会社も米花町の近くなんだ。仕事帰りとか食事でも行こうよ。」
くっ…!しくじった!なぜ町名まで言ったんだ私は!これが社交辞令でありますように。
「うん、そうだね!時間が合うときにぜひ。ふふっ。」
連絡先を聞かれ、両親たちの手前断ることはできず爽やかに「もちろん」と言い連絡先を伝えた。
もうこのスマホは番号ごと買い替えようかな。こんなことになった上、零くんと位置情報まで強制共有されて、もはやスマホの存在がうとましい。
"あれれぇ~おかしいな~失くしたぞ~"
とか言って買い替えちゃえば自然にフェードアウトできるんじゃない?って現実逃避しそうになった。