【ごちゃまぜ】SHORT STORY【ヒロアカ】【鬼滅の刃】
第10章 More 〜8年後、恋に落ちる5秒前〜
【 04 】
居酒屋の喧騒を抜け出すと、冷たい夜風が火照った頬を心地よく撫でた。
「みんな、相変わらず騒がしかったなぁ。切島くんたち、二次会で朝まで飲む勢いだったね」
「あはは、ほんとだね。でも久しぶりにみんなと集まれて楽しかったな」
出久がそう言って、隣を歩く私に笑いかけた。
駅へ向かう夜道を並んで歩きながら、他愛もない会話を交わす。
プロヒーローとして、そして雄英の教員として多忙な日々を送る出久は、昔よりずっと肩幅が広くなっていた。
優しい笑顔は昔と変わらない。それでも、隣を歩く姿には、すっかり大人の男の雰囲気が漂っている。
「出久は明日もヒーロー活動? それとも学校?」
「明日は午前中が事務所で、午後から雄英の授業だよ」
「そっか、相変わらず大忙しだね。体に気をつけてね」
「うん、ありがとう」
そんな話をしているうちに、あっという間に駅の改札前についてしまう。
もう少し一緒にいたかったな、という思いを慌てて胸の奥に閉じ込めた。
「じゃあ、私はこっちの路線だから。今日は楽しかったよ、じゃあね!」
寂しさを隠すように努めて明るく笑い、手を振って背を向けた、その時だった。
手首を、強く掴まれた。
「えっ……?」
引かれた勢いに驚いて振り向くと、出久がすぐ目の前に立っていた。
掴まれた手首から、そのまま指を絡めるように手を握り直される。力強い体温が、皮膚を通じて伝わってきた。
「出久……?」
突然のことに戸惑う私を、彼は逃がさないようにじっと見つめ返してくる。
いつもの優しい顔ではなく、どこか切なそうで、それでいて譲る気のないまっすぐな目。
彼が息を小さく呑み込む音が聞こえた。
「生徒たちの前でも、国民の前でも『頼れるヒーロー』でいられるのに……君の前だと、どうしても欲張っちゃうんだ」
触れている体温と、鼓膜を揺らす低い声に、息が止まりそうになる。
顔を覗き込んできた出久の瞳に宿る熱に、胸が跳ね上がった。
「―――ごめん。今夜はもう、僕を『男』として見てくれるまで、帰してあげられない」