【ごちゃまぜ】SHORT STORY【ヒロアカ】【鬼滅の刃】
第10章 More 〜8年後、恋に落ちる5秒前〜
【 02 】
居酒屋の喧騒のなか、私は隣に座る耳郎響香にこっそり耳打ちをした。
「ねぇ響香、上鳴とまだ付き合わないの? 事務所も隣同士で仲良いのに」
「は? 誰と?」
「だから上鳴と」
「ぶっ……! ないない! あるわけないじゃん!?」
響香は危うくビールを吹き出しそうになりながら、「あいつの相談相手させられてるだけだし!」と笑い飛ばす。
響香は少し離れた席で切島たちと騒いでいる上鳴へ視線を向けると、どこか呆れたように笑った。
「言っとくけどさ、あいつが昔から誰のこと好きか、ウチは知ってるけどね」
響香の言葉の意味を考える暇もなく、当の上鳴が「なになに〜? 俺の話〜?」とハイボールのグラス片手に、私の隣の空いた席へ滑り込んできた。
「お前また俺の変な噂吹き込んでねぇだろうな?」
「ははっ、隠し事が下手な奴の心配してやっただけ。じゃ、トイレ」
響香は思わせぶりに肩をすくめると席を立ってしまった。
残されたのは、私と上鳴のふたり。
「で? なに話してたの?」
いつもの軽い調子で顔を覗き込んでくる上鳴。整った顔立ちと、少し赤くなった頬。相変わらず距離感が近くてドキドキしてしまう。
「ううん。二人って本当に仲が良いなって思って」
「……は?」
上鳴がぴたりと動きを止めた。
グラスをテーブルに置く音が、小さく響く。
「、お前さ……もしかして本気で俺と耳郎がどうこうなるとか思ってんの?」
「え? だって、いつも一緒にいるし……」
「あいつはただの相棒。……それに、俺が昔から誰のこと相談してると思ってんだよ」
いつものチャラけた笑顔が消え、真剣な瞳がまっすぐ私を射抜く。
上鳴の手がすっと伸びてきて、テーブルの上の私の手を包み込んだ。ほんのり温かい熱と、微かに震える指先。
「お前が鈍感すぎるから、耳郎にも『いい加減本気見せろ』って怒られたばっか」
「え……?」
「もうチャラチャラ笑って誤魔化すの、やめっから」
重ねられた手にぎゅっと力がこもり、逃げられないように指を絡められる。
顔を覗き込んできた上鳴の瞳に宿る真剣な熱に、鼓動が跳ね上がった。
「―――覚悟して聞いてよ」