【ごちゃまぜ】SHORT STORY【ヒロアカ】【鬼滅の刃】
第10章 More 〜8年後、恋に落ちる5秒前〜
【 01 】
居酒屋が入るビルの前。
約束の十五分前に着いたはずなのに、遠くからでも一目でわかる赤髪の男がすでに立っていた。
「切島くん! 早いね」
「おう! お前も早えな!……つっても、俺はお前が来るの楽しみすぎて三十分前には着いてたんだけどな!」
豪快に笑う切島は、プロヒーローとしての経験を重ねて身体も一回り大きくなり、私服姿もすっかり大人びて見えた。
街灯の光に映える男らしい横顔に、思わず胸が跳ねる。
「切島くん、私服もすごくかっこよくなったね。街で待ってたら目立っちゃうんじゃない?」
軽い褒め言葉のつもりで口にすると、切島は「え……っ!?」と大きな声をあげて動きを止めた。
豪快な笑顔が一変し、ガシガシと首の後ろを掻きながら一気に顔を真っ赤にしていく。
「ま、マジで……?いや、お前そうやってサラッと言うけどさ……めちゃくちゃ照れるんだけど!」
「だって本当のことだから」
いつも仲間を引っ張る男気あふれる彼が、私の一言でここまで狼狽えている。そのギャップに、私までドギマギしてしまう。
切島は照れを振り払うように軽く息を吐くと、一歩踏み出して距離を詰めてきた。
鍛え上げられた大きな体躯の影が私をすっぽりと覆い、さっきまでとは違う「男」としての存在感を感じさせられる。
「……あのさ、。みんなが集まる前に、これだけは言っときたくて」
「え?」
ガシッ、と大きくて温かい手が私の手首を掴んだ。
個性を使うまでもなく鍛え抜かれた大きな手が、優しく、けれど逃がさない強さで私の手首を包む。
「今日、お前が来るって聞いたから一番に来たんだ。……俺、お前のこと、ただの『仲間』だなんて思ってねぇから」
照れくさそうに目元を赤くしながらも、その真っ直ぐな赤色の瞳には一切の迷いもなかった。
「居酒屋に入ったら、みんなに邪魔されてお前とゆっくり話せねぇだろ?」
掴まれた手首からダイレクトに熱が伝わり、心臓がうるさいほど脈打ち始める。
切島はフッといたずらっぽく笑うと、繋いだ手に少しだけ力を込めた。
「だから……今日の飲み会、ずっと俺の隣に座れよ。席が決まってたって関係ねぇ。俺が絶対、お前の隣の席取るから」