【ブルーロック】GAGAMARU symphony
第3章 近くの野生児
「ん?早く帰ってマンガ読みたかったから」
「それだけ?」
「ん、それだけ」
「…そう、なんだ」
少し戸惑っている私の様子を我牙丸くんは不思議そうに眺めていたけど、手の平を開いて私の方に向けて「じゃあ、また明日」って言った。
「明日は土曜日だから休みだよ?」
私がそう訂正すると、我牙丸くんは「あー」と視線を上にあげて何かを考えた。
そして、
「じゃあ、また」
結局「明日」をとっただけの挨拶を口にした。
「あ、うん…またね」
私も胸の前で軽く手の平を開いてみせると我牙丸くんは何故か一度だけ頷いてから歩き出した。
やっぱり歩くのは速くて、ズンズン小さくなっていく背中を見送っていたけれど一度も振り返ることなく去っていった。
我牙丸くんが見えなくなってから、なんで見えなくなるまで見送ってんだろって思い直して家に入る。
居間のソファにボスリと座って大きく息をついた。
我牙丸くんが家にいたのは時間にしたら30分もなかったのに何だかドッと疲れた。
「吟くんって良い子そうね」
お母さんが晩ご飯の準備の手を止めないで言う。
…ちょっと待って。
なんでお母さんが我牙丸くんのこと『吟くん』って呼んでるの?
「…お母さん、我牙丸くんと何話したの?」
「んー?変なことは話してないわよ?学校で透がどうしてるか、とか。透は学校のこと何にも教えてくれないじゃない?」
そうだけど…それを我牙丸くんに訊いて我牙丸くんは何て答えたんだろう…
「…何て言ってた?」
「んー、いつも音楽聴いてるから吟くんがサザンをおすすめしたーとか、吟くんもマンガが好きだから今度透にマンガ貸すーとか?」
うん。
なんか我牙丸くん、私のこと答えてるふりして自分のこと話してたな、これ。
だから、こんなにもお母さんと打ち解けてるのか…。
でも私が学校でどう過ごしているかは伝わっていないようだからひとまず安心した。