【ブルーロック】GAGAMARU symphony
第3章 近くの野生児
「お母さん、ただいまー」
いつも通りを装ってそう言うと、『はいはい〜』とインターフォンが切れた。
そこからまたしばらく待って鍵がガチャリと開いたので自分でドアを開けた。
そしたらお母さんが目の前に立っている。
いつもなら鍵を開けたら部屋に戻っていくのに。
「透、お友だち?」
「え…?」
やったな…我牙丸くん。
しゃがんでって言ったのに立ってこっち見てるんだ…絶対!
「あー…」
返答に困りながら後ろを振り向こうとした時だった。
「はい、友だち」
っていう聞き慣れた抑揚のない声が頭の上から振ってきた。
「は?」
驚いて瞬時に声が聞こえた後ろ上方を向く。
いつものどんぐり眼が今はお母さんに向けられている。
なんで?
さっきまで門の外にいたじゃん。
いつ、どの瞬間に、私に気取られずに背後を取ってるの!?
私がプチパニックを起こしている間にも
「まぁ、透がお友だちを家に連れてくるなんて久しぶり!」
とか
「もうこんな時間だけど少しだけ上がっていって」
とか。
トントン拍子に我牙丸くんは我が家の居間に通されていた。
「…お母さん…我牙丸くんさ、部活で疲れてるから早く帰してあげなきゃだよ?」
って言っても、
「そんなに疲れてない。大丈夫」
って我牙丸くんが答えるし、
「まぁ、我牙丸くんっていうのね?苗字?名前?」
なんてお母さんが訊くからそれとなく会話が進んでいく。
で、我牙丸くんが
「透、CD取り込んでないなら三枚目だけ今取り込んで」
とか変な提案するから私だけ自分の部屋に行くことになって、必然的にお母さんと我牙丸くんを居間に残す形になってしまった。
ヤバいヤバいヤバい。
絶対お母さん不審がるよ。
私だって自分の娘があんなん連れてきたらビビるもん。
うわー、パソコン、早くこのCD取り込んで!
一応部屋のドアは開けてるけど、二階の自分の部屋から一階の居間の話し声までは聞こえない。
初見で我牙丸くんとの会話が成立しているかはわからないけど、なるべく早く戻らなければというプレッシャーがパソコンを操作する指を震わせる。
そして、こういう時に限ってパソコンが思い通りに動かないんだよなぁ!
なんで画面の真ん中でクルクル円が回ってるの?
昨日はちゃんと動いてたでしょうが!