【ブルーロック】GAGAMARU symphony
第3章 近くの野生児
「そうかー?」って不思議そうに首を傾げる我牙丸くんからは何の悪意も邪気も下心も感じない。
ここ数日でもうわかってきてる。
我牙丸くんってそういう人。
その時、ちょうど曲が変わった。
「あ、これ」
「?」
「何年か前のバレーの大会のテーマ曲だよね?」
「そうなのか?」
「え、あ、うん」
「知らなかった。俺、テレビはほとんど見ないから」
「あ、そうなんだ」
「うん」
「でも、このCDに入ってる曲は何となく聴いたことある曲があるから聴きやすいよ」
「ふーん、そうか」
「サザンって声に安定感があって心地良く聴けるね」
「んー」
「それに曲調も最近の流行りの曲にはない感じだし」
「ん?」
「歌詞も面白いしリズムも独特で聴いてて飽きないし」
「……」
私はさっきまで考えていたサザンの感想を一生懸命伝えたつもりなのに我牙丸くんの相槌はどこか不明瞭で、遂には黙り込んでじっと私を見つめ出す始末。
え、私、変なこと言った…?
我牙丸くんは私を見つめたまま口を開いた。
「透…」
「は…はい…」
何を言われるのだろうと身構えてしまう。
「すごいな」
「…え?」
「俺、そんなこと考えてサザン聴いたことなかった」
「え…そうなの?」
「うん。なんか、いいなーって思って聴いてたけど。そこまで考えたことなかった」
「あ…そうなん、だー…」
なんだ…我牙丸くんもそんなに深く考えてサザンが好きなわけじゃないんだ。
なんだ、そんなに気負わなくっても良かったのか…。
なんだか一気に肩から力が抜けるようだった。
「…私、我牙丸くんにCDの感想言わなきゃ言わなきゃって思っちゃって…なんか頑張って聴いてた」
「サザンは頑張って聴くもんじゃない」
「はは、そうだね。でも、さっきの感想は本当に感じたことだから」
「おー。透がサザン気に入ってくれてよかった」
そういう我牙丸くんの目はいつも通りのどんぐり眼なのに、どこか優しげに見えて。
私はようやく安心できた。
でも、感想を求めてたわけじゃないのだとしたら、朝から物言いたげなあの視線はなんだったんだろう?
むしろ、今もこんな校舎の隅っこの犬走りまで来たのは何か別の用事があったからじゃないのかな?という考えに至った。