第9章 『予兆く』
しばらくして、
窓の外から聞き慣れた声がした。
「先生ー」
湯川は席を立つ。
窓から下を見ると、
フルートを持ったままの星宮がいた。
「今日はちゃんと寝ました!!」
「……そうか」
「六時間!!」
「十分とは言い切れないが、前回よりはいい」
「厳しい!!」
「事実だ」
「でも今日は元気です!!」
「ああ」
「分かるんですか?」
「音を聞けば分かる」
「またそれ」
星宮が笑う。
「先生」
「何だ?」
「今、安心しました?」
「…………」
湯川はわずかに黙った。
「何故?」
「なんとなく」
「根拠がない」
「顔です」
「僕のか?」
「ちょっとだけ」
「…………」
「違います?」
湯川は窓から離れた。
「気のせいだ」
「絶対そう言うと思った!!」
「練習しろ」
「はーい」
再びフルートの音が始まる。
湯川は席へ戻り、論文を開き数行読む。