第14章 『応答る』
一方、
大学を出た湯川は夜道を歩いていた。
信号が赤に変わり、足を止める。
手の中には、まだスマートフォンがあった。
画面に表示された通話時間は、
二十七分。
「…………」
必要なことだけを話すなら、
こんなに時間はかからない。
帰る時間も、夕食のことも、睡眠時間も。
確認するだけなら、
数分で済んだはずだった。
それでも、二十七分。
「…………」
ふと、さっきの声が蘇る。
『先生の声聞いてると』
『なんか、安心するなって』
「…………」
青信号に変わる。
周囲の人間が歩き出して、
少し遅れて湯川も足を踏み出した。
スマートフォンの画面を消す。
そのままポケットへしまおうとして、
手が止まった。
「…………」
もう一度画面を点ける。
そこにある、
『星宮 亜希』の名前を、
しばらく見つめた。
やがて何もせず画面を消した。