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【G@lileo】音色の方程式

第9章 『予兆く』




 「先生」

 「何だ?」

 「本当に練習しちゃダメ?」

 「ダメとは言ってない」

 「やめた方がいいって言ったじゃないですか」

 「僕ならやらない」

 「先生、フルート吹かないじゃないですか」

 「そういう意味ではない」

 「分かってます」


 水を一口飲む。
 冷たい感覚が喉を通る。


 「でも吹いたら、ちょっと元気になるかもしれないですよ」

 「逆に消耗する可能性もある」

 「先生って、何でもリスクで考えますよね」

 「その方が合理的だ」

 「楽しいですか?」

 「何が?」

 「そういう生き方」

 「…………」


 先生が少しだけ黙る。


 「少なくとも、不満はない」

 「そっか」

 「君は?」

 「何がですか?」

 「楽しいのか?」

 「…………」


 すぐには答えられなかった。

 就活、ゼミ、部活、演奏会。

 考えなければいけないことが、
 最近少しずつ増えている。


 「楽しいですよ」


 ようやく答える。


 「でも」

 「でも?」

 「余裕はないかも」

 「…………」


 先生は何も言わなかった。


 「みんな普通にやってるじゃないですか」

 「何を?」

 「就活も、大学も、バイトも、部活も」

 「全員が同じ負荷に耐えられるとは限らない」

 「分かってます」

 「なら、比較する意味はない」

 「……先生は簡単に言いますね」

 「簡単な問題だからだ」

 「ひど」

 「君自身の限界値と、他人の限界値は別だ」


 先生は、
 いつも通り淡々としている。


 「他人ができることを理由に、自分も同じだけできると仮定する方が不合理だ」

 「…………」

 「休むことも、選択肢の一つだろう」


 またこの人は、
 頑張れとは言わない。
 大丈夫とも言わない。

 でも、
 私が勝手に絡ませていたものを、
 一つずつ切り離していく。





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