第8章 間章『第三者の観測』後編
「内海君」
「……はい」
「笑ってるだろう」
「笑ってません」
「こちらを向け」
「無理です」
「何故?」
「ちょっと……」
「何だ?」
「ふふっ……」
「だから何がおかしい」
その隣で草薙は額を押さえていた。
「湯川」
「何だ?」
「もう諦めろ」
「何をだ?」
「そういうとこだよ」
「だから何なんだ?」
「分からないならいい」
「君まで内海君と同じことを言うな」
「いや、俺は昔からお前を知ってるから言ってるんだよ」
「余計に意味が分からない」
「だろうな」
栗林は何も言わず、
自分の仕事へ戻っている。
ただ、その顔にはほんの少しだけ、
諦めにも似たものが浮かんでいた。
「…………」
星宮は、
砂糖が一つ増えたコーヒーを飲む。
「あ」
「何だ?」
「美味しくなった」
「糖分が増えたんだから当然だ」
「先生が入れたからかも」
「あり得ない」
「分かんないですよ?」
「分かる」
「なんで?」
「砂糖を入れる人間によって味が変化するなら、物理法則の見直しが必要だ」
「夢がないなぁ」
「コーヒーに夢を求めるな」
「ふふっ」
内海が今度は隠しもせず笑う。
「内海さん!!」
「ごめんごめん」
「もう」
「でも、星宮さん」
「はい?」
「なんか分かった」
「何がですか?」
「湯川先生と仲いい理由」
「え?」
「話してて楽しそう」
「…………」
星宮が少しだけ目を瞬かせる。