第13章 『接続る』
「分かりました」
「ああ」
「交換しましょう」
私はスマートフォンを取り出した。
「先生、こういうのちゃんとできるんですね」
「僕を何歳だと思ってる?」
「いや、そうじゃなくて」
「では何だ?」
「先生、あんまり連絡先交換とかしなさそうだから」
「必要ならする」
「必要なら」
「ああ」
「…………」
──必要。
また、その言葉だ。
「何だ?」
「何でもないです」
「またか」
画面を操作する。
しばらくして名前が登録される。
湯川学。
「…………」
なんだろう、
少しだけ変な感じがする。
今まで、
先生と会うのはいつも大学だった。
火曜日と木曜日。
いつもの場所、研究室。
それ以外では、
偶然、構内で会うくらい。
それが、
小さな画面の中に先生の名前がある。
「…………」
「終わったか?」
「あ、はい」
「確認した」
「じゃあ、私にも一回送ってください」
「何故?」
「ちゃんと届くか確認です」
「今登録しただろう」
「いいから」
「…………」
先生がスマートフォンを操作する。
数秒待つと手の中で、
スマートフォンが震えた。
『湯川です』
「…………」
思わず笑ってしまった。
「先生」
「何だ?」
「硬いです」
「何が?」
「文章ですよ」
「名前を送っただけだ」
「分かってますけど」
「他に何を書くんだ?」
「例えば、よろしくとか」
「何をよろしくするんだ?」
「そこ!?」
「他に何がある?」
「…………」
「何だ?」
「もういいです」
「そうか」
私は返信する。
『よろしくお願いします笑』
送信すると、
先生のスマートフォンが鳴る。
「…………」
画面を確認した先生は、
何も言わずスマートフォンをしまった。
「先生って、メッセージでも先生なんですね」
「意味が分からない」
「こっちの話です」
私はもう一度フルートを構えた。