第13章 『接続る』
「…………」
湯川は本へ視線を落とした。
以前とほとんど同じだった。
ベンチに座り、本を読み、
少し離れた場所で彼女がフルートを吹く。
「…………」
結局、
これが一番自然だった。
ただ一つだけ、
以前のままでは不便なことがある。
「星宮君」
「はい?」
彼女の演奏が止まる。
「連絡先を教えてくれ」
「…………」
星宮が構えていたフルートを下ろす。
「え?」
「連絡先だ」
「それは聞こえました」
「なら何だ?」
「いや……先生から言うんだなと思って」
「何か問題が?」
「ないですけど」
私は先生を見る。
冗談を言っているようには見えない。
「何で?」
「必要だからだ」
「必要?」
「ああ」
先生は、
当然のことのように言った。
「前に、君が体調を崩したことがあっただろう」
「はい」
「その次に来るかどうか、確認する手段がなかった」
「…………」
「今後も同じことがないとは限らない」
「それで?」
「ああ」
「…………」
先生にとって、
私と連絡を取る手段が必要になった。
そのことが、
なんとなく嬉しかった。