第12章 『離隔る』
湯川は研究室を出た。
階段を下りる。
自動販売機は一階だ。
「…………」
その前を、通り過ぎた。
外へ出ると、
途端にフルートの音が鮮明になった。
「…………」
やはり、彼女の音だ。
そしてやはり、
いつもとは少し違う。
以前なら、
そのまま近づいていた。
何度吹き直したか数え、
変化の原因を考え、
必要なら話しかけた。
「…………」
今は、
それをしない方がいい。
そう考えた。
湯川は足を止め、
引き返そうとした。
「先生?」
「…………」
顔を上げると、
彼女がこちらを見ていた。