第12章 『離隔る』
「最近、湯川先生来ないね」
「っ!!」
部活の休憩時間、
同じフルートパートの子に言われて、
思わず顔を上げた。
「何で知ってるの?」
「だって前、見に来てたじゃん」
「一回だけだよ」
「演奏会も来てたし」
「…………」
「喧嘩した?」
「してない」
「じゃあ何?」
「知らない」
「連絡すれば?」
「連絡先知らない」
「え!?」
「何」
「友達なのに?」
「…………」
そういえば、
先生の連絡先を知らない。
先生も、
私の連絡先を知らない。
今まで、
大学へ来れば会えていたから、
必要だと思ったこともなかった。
「今まで大学で会えてたから」
「ふーん」
「何、その顔」
「別に」
「言いたいことあるなら言って」
「寂しい?」
「…………」
言葉が止まった。
「先生来なくて」
「別に、そういうんじゃ……」
言いかける。
でも、じゃあ、
どういうものなのか。
自分でも、
うまく説明できなかった。
「…………」
「……分かんない」
「お」
「何」
「素直じゃん」
「うるさい」
私はフルートを手に取った。
──寂しい。
その言葉が妙に頭に残っている。
違う、と。
もう一度否定しようとしてやめた。
先生が来ないからといって、
何かが困る訳じゃない。
あのベンチが空いているだけで、
いつもの場所が少しだけ違って見える。
それを、寂しいと呼ぶのかどうかは、
まだ、分からなかった。