第12章 『離隔る』
次の火曜日。
午後二時四十分。
「…………」
研究室の窓は、
今日も閉まっていた。
湯川は時計から目を逸らす。
机の上には、
読みかけの論文と、
その横には、コーヒー。
いつもと同じ、それでいい。
「…………」
午後二時四十六分。
そろそろ彼女が来る。
そう考えて、
湯川はペンを止めた。
「…………」
時計を見る。
また手元へ視線を戻す。
*
「…………」
私はフルートケースをベンチの横へ置いた。
理工学部棟の窓を見上げると、
今日も閉まっていた。
「…………」
先週の木曜日も、
先生は来なかった。
大学構内で偶然会うこともなかった。
研究室へ行けば、
多分、いるはず。
でも、
用事もないのに行くのは、
なんか違う気がした。
「…………」
私はフルートを組み立て、
いつも通り音を出す。
「…………」
音は悪くない。
音程も、息も、特に問題はない。
それなのに、
なんとなくつまらない。
「…………」
楽器を下ろし、
空いているベンチを見る。
今まで一人で練習をしていた。
高校時代も、
大学でオーケストラへ入ってからも。
個人練習は、
一人でするものだった。
それが、いつからだろう。
ここに誰もいないことが、
こんなに気になるようになったのは。