第10章 『帰結る』
「来てくれたんですね!!」
「ああ」
「本当に来ると思わなかった」
「予定が空いていたからな」
「それでも嬉しいです」
「…………」
彼女が笑う。
舞台の上とは違ういつもの顔だった。
「どうでした?」
「演奏か?」
「それ以外あります?」
「全体として完成度は高かった。特に第二楽章──」
「先生」
「何だ?」
「今日はもうちょっと普通の感想が欲しいです」
「普通?」
「綺麗だったとか」
「…………」
湯川は少し考えた。
「よかった」
「…………え?」
「よかったと思う」
「…………」
「何だ?」
「いえ」
思っていたより、
その一言が嬉しかった。
「ありがとうございます」
「ああ」
「先生にしては百点」
「評価基準が不明だ」
「今日はいいんです」
私は笑った。