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君に唄う 【呪術廻戦*ヒロアカ】

第1章 『ひとりぼっちの人魚姫』 プロローグ


——十数年前、青く澄み渡る海に囲まれたとある島で、ひとりの女の子が産声を上げた。



陣痛の苦しみを乗り越えて産まれた我が子を抱き上げた両親は、その小さな脚を見て息をのむ。
足首に光り輝く美しい鱗がついていたのだ。
両親は一瞬驚きに目を見張ったものの、長く祈り続けてようやく授かった愛おしい命に深く感謝し、この子をありったけの愛で育てようと心に誓った。



しかし、その平穏は長くは続かなかった。
古くから恐ろしい『人魚伝説』が語り継がれるその島では、どこからか噂が伝播するのに時間はかからなかった。






「あの家には呪われた人魚の子が産まれた——」




心ない忌み嫌いの声と迫害の目は、日に日に激しさを増していった。
愛する娘を守るため夫婦は集落を離れ、島の端でひっそりと暮らす決断を下した。
他の島民たちとは一切関わらず、ただ家族三人で静かに寄り添って生きる。
それが、彼らに残された唯一の選択肢だった。








赤子はすくすくと育ち、美しい少女へと成長した。
ある風の穏やかな日。
漁に出る父親を笑顔で見送った母と少女は、小さな家の中で静かな時間を過ごしていた。
母が取り出したのは、一枚冊の『人魚姫』の絵本——。
母が優しく物語を読み聞かせるうち、少女の大きな瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちた。
泡となって消えてしまう人魚姫の悲しい結末に、幼い心は深く痛んだのだ。



少女が声を上げて泣きじゃくった、その瞬間だった。
穏やかだった空が曇り、外の海がまるで狂ったように荒れ狂い始めた。
見たこともない大波が岩肌を穿ち、嵐のような暴風が家を揺らす。





そして——海へ出た父親は、二度と帰らぬ人となった。






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