第1章 『ひとりぼっちの人魚姫』 プロローグ
♪〜
——La... La-La-La...——
とある島では、息をのむほど美しい歌声が響いていた。
夜の静寂を切り裂くように、波間を渡るその旋律が悲しく響き渡る。
——La-La... La-La-La-La...——
足に鱗のある美しい歌声を持つ彼女は、寂しそうに唄う。
夜中の海辺で一人、人魚姫の悲しい結末が描かれた本を抱きしめながら。
何故、人魚には幸せな未来がないのか。
その悲しい結末を憂えながら——。
♪〜
——La... La-La-La...——
月光が青白く照らし出す渚で彼女から零れる旋律は、波の音に溶けて夜空へ消えていく。
ひんやりとした風が、彼女の髪と抱きしめた本のページを静かに揺らした。
童話の中の人魚姫は、声を失い、愛を得られず、最後には泡となって消えてしまった。
(どうして……どうして、人魚は報われないの?)
足首にうっすらと浮かび上がる美しい鱗を指先でそっとなぞる。
声と引き換えに脚を得た人魚姫の悲しみや苦しみが、胸を締め付けるように痛んだ。
彼女自身もまた人魚の悲しい運命を背負い、孤独を胸に抱えて生きている。
人魚の歌は人を惑わす呪いか、それとも届かぬ愛を乞う祈りなのか。
答えの出ない問いを夜の海に問いかけるように、彼女はふたたび静かに唇を開いた。
——La-La... La-La-La-La...——
悲しくも美しいその歌声は波間に漂う泡沫のように、儚く夜の海へ響き続けていた——。