第2章 『泡沫の君に永遠の青を』 五条悟
は決して「呪われたバケモノ」などではなかった。
同じように不思議な力を持つ人間が島の外の世界には存在し、それを「才能」と呼んでくれる人がいる——その事実を知った瞬間、彼女の瞳にほんのりと温かな光が宿り、どこかホッとしたように口元が緩んだ。
そんな彼女の表情の変化を見逃さなかった五条は、ニッと不敵な笑みを浮かべた。
「こんな狭くて閉鎖的なド田舎で縮こまってねぇでさ、俺たちのところに来いよ」
「え……?」
思いがけない言葉に少女が息をのむ。
「高専って学校があるんだよ。お前みたいな奴らが集まるところ。自分の力のコントロールの仕方も学べるし、こんな島に一人でいたって宝の持ち腐れだろ。……お前のその力、外の世界ならちゃんと意味を持つぜ」
外の世界へ、彼らの元へ——。
差し出された五条の手と言葉に、彼女の心は激しく揺れ動いた。
(わたしが……島の外へ……?)
けれど、彼女の視線は吸い寄せられるように、後ろに並ぶふたつの静かな墓標へと向かう。
「……でも、お父さんとお母さんを置いてはいけない。……ここには、わたしの家族がいるから」
寂しそうにぽつりと呟いた彼女の言葉に、五条は不満そうに眉をひそめた。
「はぁ? 墓なんてものはどこにいたって参れるだろ。だいたい、そんな煮え切らない態度取ってたら一生この島でウジウジしたまんまだぞ」
「あっ……!」
返事を待つ気など毛頭ない五条は彼女の華奢な手首をがしと掴むと、そのまま強引に引きずり歩き出した。
驚いて足をバタつかせる彼女だったが、規格外の力で引っ張られそのまま夜の町を抜けて宿へと連れてかれてしまう。
◇
「おい傑〜! 連れてきたぞ〜!」
大きな音を立てて宿の部屋の襖が開け放たれた。
夜中まで資料と向き合っていた夏油と補助監督はが弾かれたように振り返ると、五条の隣で手首を掴まれたまま気まずそうに身を縮めているのは、昼間遭遇した例の『人魚』の少女だった。