第2章 『泡沫の君に永遠の青を』 五条悟
「どうして……どうして私なんだろう……っ。なんで私は生まれながらに呪われてるの……!? なんでこんな足で、こんな力を持って産まれてきちゃったの……っ!」
自分の存在そのものを呪い、悲痛に嘆く彼女。
その涙を無言で見つめていた五条は、小さく息を吐くと、彼女にとって思いがけない言葉を口にした。
「お前は呪われてなんかないよ」
「え……?」
「それ、人魚の呪いでも何でもねーよ。ただの『術式』だ」
あまりにも呆気なく言い放たれた言葉に、彼女は涙を浮かべたまま呆然と五条を見返した。
「じゅつ……しき……?」
「そう。生まれつき身体に刻まれた、特別な才能みたいなもん。感情で天候が変わるのも、植物を動かすのも、全部お前の呪力と術式。ついでにその脚だって、条件で形が変わる単なる生体変化の一種だ」
五条はサングラスを指で少し持ち上げ、六眼で彼女の全身を透かすように見つめた。
「お前はバケモノでも呪われた存在でもない。ただ、自分の力の使い方を知らなかっただけだ」
「術式……? 才能……?」
五条の言葉が信じられず、少女は涙の滲んだ大きな瞳を見開いた。
「そう。特別な才能」
五条は優しく笑うと、自分の指先を彼女の前にかざしてみせた。
「俺も、昼間一緒にいた傑ってやつも、お前と同じように生まれつきの能力……『術式』を持ってんの。俺のは『無下限術式』ね。さっきお前の蔓が届かなかったろ? あれは俺の周りにある『無限』が、あらゆる攻撃を寄せ付けないようにしてんだ」
「あらゆるものを……寄せ付けない……」
五条はそこから呪力とは何か、自分たちが属する高専や呪術界の事。
彼女が持つ力もまた、世界に数多く存在する異能のひとつに過ぎないのだということを、噛み砕くように説明した。