第2章 『泡沫の君に永遠の青を』 五条悟
「すぐに追うか? まだ遠くへは行ってねーみたいだし」
少女が消え去った先を見つめながら、五条がサングラスをクイと上げて言った。
その声には、久々に骨のある相手を見つけた高揚感が混じっている。
だが、夏油は静かに首を振った。
「いや……一旦村へ戻ろう」
「は? なんでだよ。逃げられたら面倒だろ」
「彼女の瞳を見たかい、悟? ……あれは攻撃というより、ただの『拒絶』だった。それに彼女の目……どこか深く怯えているように見えたんだ」
ただの兇悪な呪詛師なら容赦なく叩き潰せばいい。
だが、先ほど交わした視線の中にあったのは、害意というよりも追い詰められた獣のような怯えたものだった。
「ふ〜ん……」
五条はつまらなそうに鼻を鳴らしたが、小腹も空いていたので反対はしなかった。
「ま、いいけどさ。小腹空いたしこの島のご当地甘味ツアー行ってくるから、情報収集はよろしく〜♪」
「えっ?おい、悟……」
引き留める間もなく五条はひらひらと手を振りながら、さっさと港の方へと歩き出してしまった。
相変わらずの自由奔放さに、夏油は「やれやれ」と小さくため息をつく。
(まあ、悟を連れて歩くより、私一人の方が島民も余計な警戒をせずに話をしてくれるかもしれないし……ね)
気を取り直した夏油は少女の正体と、彼女がなぜそれほどまでに人を拒むのかを突き止めるため、再び村へと足を進めた。